格闘ゲームと私

アークシステムワークスがバトルプランナーの採用において「格闘ゲームと私」という文章を求めているという話題に便乗して
現在アークに入社する気のない(週5で働く気のない)俺が公開文書として「格闘ゲームと私」を書く

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ゲームを1200本以上プレイしている俺が、今までやった中で最も面白かったタイトルは『ギルティギアイグゼクス シャープリロード』であり
最も面白いと思うジャンルが2D対戦型格闘ゲームである。

俺は「ゲームといえば横スクロールアクションゲーム」世代のケツの方に生まれた人間であり、それが体に染み付いている。
そして無類の1on1対戦ゲーム好きで、 ぷよぷよ、ポケモン、カードゲーム、等、1vs1で対戦できるゲームとあらば様々なタイトルに手を出してきた。
 
つまり俺にとって格ゲーは、好きなものと好きなものを合わせた究極存在のようなもので
取り憑かれたようにプレイするのは必然であった。


では俺が考える格ゲーの面白さとは何か、一体格ゲーに何を求めているのか。
 
俺にとって格ゲーとは「自己表現」であり、
(見た目や設定が)好きなキャラクターで、好きな動きをして、好きな戦いの表現をするのが面白いと思う最大のポイントだ。
それはボードゲームやスポーツといった他の戦いでは理想レベルでは出来ない事で、ビデオゲームのプレイによってやっと出来うる事だ。

格ゲーで「自己表現」をするためには個性豊かなキャラクターと自由自在なアクションは必要不可欠であるが、それとは別に、いや、右も左も分からない入門者が「自己表現」へと至るために、格ゲーにおいてもう一つ必要不可欠だと考える要素がある。

それは「一人用ゲーム」である。
 
 
俺が100点満点中100点をつけているタイトルにニンテンドウ64の『カスタムロボ』がある。
 『カスタムロボ』もまた1on1の対戦ゲームであるが、それより先にまず一人用のストーリーモードがある。
カスタムロボ使い(コマンダー)の少年たちが、クォータービューのマップをプレイヤーの操作でRPGのように自由に移動しながら、キャラに話しかけたり特定の場所にたどり着くと下部の会話ウィンドウにセリフが表示されていく形式で話が進んでいき、戦いが始まると対人戦と同じカスタムロボ同士の対戦画面に切り替わる。
昨今の対戦ゲームのソロプレイモードだとなかなか見られない形式だが、ゲームボーイのドラクエモンスターズ等が流行っていた時期には割と見られた。

コンシューマータイトルとしての格ゲーは、対戦ツールである以前に1本のゲームソフトである。
よって、一人でも遊んで楽しめて、どこかで一区切り、このタイトルを進めてクリアした!と完結する要素がなくてはならないと考えている。
 
そして、一人用モードをプレイするうちに対戦のために必要な事を学べれば、自然と対戦もしてみたくなってくる。
ゲームは軍隊の訓練ではない。練習をしているときにも練習と自覚せずに、文字通りのゲーム感覚で楽しめなければならない。


さて、ここまでの文章からわかるように、俺は今の30代なかば~40代の層のような、ゲーセンと共に成長してきた種類の人間ではない。
家庭用ゲームは買ってもらえたけれども、ゲーセンはお金のムダ、危ない場所、としてゲーセンに行くためのお小遣いは貰えなかったし、本格的にゲーセンで格ゲーをやりだしたのは大学生になってからだ。
それまではIPアドレスを掲示板に貼り合ってするようなパソコンでのネット対戦で対人戦をやっていて
初めた時期こそまだまだゲーセンでオフライン対戦をする時代の『ギルティギアイグゼクス スラッシュ』の稼働時あたりであるが、どちらかといえば、闘劇が終わって以降、オンラインが主流になってから格ゲーを初めた人の感覚に近いだろう。
 
ゲーセンへの憧れや選民意識といったブーストが無い状態で、単なる対戦ツールのような格ゲータイトルがあったとして、新規参入者がゲームとして楽しみながら格ゲーに入門することはほぼ不可能で、苦労をして情報を集めたり練習をしたり、格ゲー経験者と同じ土俵に立つための土台作りをする努力を強いられる。
格ゲーは、FPS等の他のゲームよりも「やってはいけないハズレの行動」が多い。
スポーツと同じように練習が必要不可欠で誰もが出来るわけではないものだ。
 しかし、格ゲーはスポーツではなくゲームである。楽しみながら目標を達成させられる力を持っているのがゲームだ。
 
だから、格ゲーには絶対に一人用モードが必要で、自分自身も周りがモンハンP2Gに興じる中、ひとり『ギルティギア ジャッジメント』のサバイバルモードで少しでも先に進んでまだ見ぬボス性能キャラを見たり使えるようにするためにひたすらプレイしていたし、練習よりも遊び重視な内容のミッションモードをクリアするのに夢中になっていた。そうしていく中で、実戦テクニック以前の格ゲーの操作に慣れていった。
優れた一人用モードがあれば、独立したゲームモードとしてのチュートリアルがなくても格ゲーの操作を楽しみながら(ゲームをやった気になりながら)覚えられる。

せっかくリアルで一人でもオンラインで人同士が繋がれる時代、兄弟や友達がいなければ入門のハードルが高いなんて、それほど勿体ない事はない。
人と人なんてトラブルが起きるし、ゲームの楽しみを他人に依存していては、 何かあったときにゲームごとやらなくなってしまう。人が理由で対戦ゲーム自体をやらなくなってしまった人を見たこともある。
だが、格ゲーそのものが好きなら一人になっても格ゲーをやり続ける。


俺にとって格ゲーは、「対戦ツール」ではなくて最も面白い「ゲーム」であり、ゲームが俺の人生なのだ。